──チェロを始めたきっかけは何だったんですか?
昔はあんまり楽器を習うって時代でもなかった。楽器はハーモニカぐらいしか知らなかったような時代でね。
だけど、ある時楽器を習ってみたいと思って、何が良いかなぁと考えたとき、最初はピアノ?と思ったんだけども、なんかイマイチだなぁと。私は弦楽器、ヴァイオリン属っていうんですかね、そっちの音の方が好きだったんですよ。ピアノよりもランクが上っていうかね、高尚な感じがしたんだよ(笑)で、チェロって弾く姿がかっこいいじゃない?
あとね、糸川さんっていう日本の宇宙開発の父と呼ばれる人がいたんだけどね、その人が60歳からヴァイオリンをはじめたらしいんですよ。それが頭にあったから、私でもやればできるんじゃないかと思いました。そういうわけで、チェロにしようと決めました。それが平成19年の話。
──じゃあ、音楽は元々好きだったんですね。クラシックのCDとかは聴いたりしていたんですか?
えぇ、カザルスの無伴奏集とか、フルニエのCDとか、わりと古い人のをたまに聴いたりしていました。昔から音楽は好きだったのでね。
──それで、最初はどこでチェロを習い始めたんですか?
はじめは大手のY音楽教室のグループレッスンに通いました。当時6人でレッスンを受けるような形で、6人中4人が若い人だった。みんな若いからテンポも何もかもが早いんですよ。それで私は毎回レッスンについて行けなくて、グループの雰囲気にも馴染めなかった。結局半年くらいで辞めてしまいました。
それでどうしたものかなぁと思っていた時、友人が営むイタリアンレストランで、カルテット演奏を聴きながら美味しいお酒と食事を楽しむというディナーの企画があって、そこで演奏していたのがあなただった。
──演奏のあと、私たちもお客さんと一緒にワインをご一緒させていただいたんですよね。マスターがSさんのことを「この人僕の友達なんだけどさ、チェロやってるんだよ!ちょっと今教えてやってよ!」って(笑)その場でチェロのレッスンが始まったことを思い出します。懐かしいですね〜
それで当時渋谷の音楽教室であなたが教えてるって聞いて、そこで2年習った。Arcoを立ち上げるっていう時もこのまま「この人に習いたい」と思って、レッスンをお願いすることになりました。
──ところで、チェロの購入はどういう経緯で?
自分でインターネットで調べて、御茶ノ水に良さそうな楽器店を見つけました。そこは楽器も販売していたし、上の階ではメンテナンスもしてくれる工房も備えていた。何かあった時にすぐお願いできるかなぁと思って、そこでセットで安めの楽器を買いました。
──なるほど。普段の練習はどんな風にされていますか?
もう今は私は60の手習いで時間もたくさんあるから、好きな時に1時間〜1時間半くらい弾いてます。まだ現役で仕事してた時は、夕方やっぱり1時間半くらいはやってましたね。
──60の手習いということで、何か大変なことなどはありますか?
やっぱり右手の力がどうしても入っちゃって、あんまり長く弾いてると親指の付け根が痛くなってくるんですよ。腰とか肩とかは大丈夫なんだけどね、だから午前と午後に分けて練習してるよ。
──色々工夫されてるんですね。Sさんは私が曲の課題を出すと、必ず写譜されていますよね。あれは何か理由があるんですか?
私は楽譜に書かれている音符を、ドレミの階名で読めと言われても、すんなり読むことができない。だけど写譜することで、この音はドだな、とかファだな、とかなんとなく体に入ってくるんですよ。
あとは元の楽譜だと1段に6小節とか書いてあるでしょ?それじゃ見えない(笑)だから書き直して1段に2小節とかにするわけ。
──そういう地道な工夫や努力をされているところが素晴らしいですよね。では、チェロを弾いていて悩むところなどはありますか?
一番の壁を感じたのは、リズム感ですね。リズム感・音感がない。やっぱりアンサンブルがやりたいし、やってると気持ちいいなぁというのがあるんだけど、リズム感がないと他のメンバーに迷惑かけちゃうから自信がない。音程も、いつも譜面台にチューナーを置いておかないと不安です。
──逆に、チェロを弾いていてよかったなと思う時はどんな時ですか?
それはやっぱり、Arcoのおさらい会でアンサンブルの楽しみを感じられる時ですね。あれは本当に気持ちがいいよ。
──そうですね。私もおさらい会で毎回生徒さんの成長を感じられたり、アンサンブルの楽しみを共有できるのはとても幸せです。大変ですけどね(笑)では、Arcoに長く通い続けていただいている理由はそこですか?
そうですね。Arcoの生徒さんたちとはもうみんな馴染んでるし、アンサンブルも楽しい。あと何よりあなたが我慢強く教えてくれるから。Y音楽教室にも通ったけど、やっぱり60の手習いで初めてで、ってなるとグループだと厳しいし、個人レッスンじゃないと無理なんじゃないかなと思いますよ。その点、今は私に合わせた内容でレッスンしてくれるから、とても助かってます。
──はい。基礎も大事なのできちんとやりますが、やはり生徒さんが弾きたい曲を弾くのが一番と思っているので、Sさんが弾きやすいように編曲してお渡しすることもありますよね(笑)
申し訳ないねぇ(笑)
──これから60の手習いでチェロを始めようと思っている方に、Sさんはチェロをおすすめできますか?
もちろん!長くやってれば楽しいし、辛いばかりじゃなくて時間をかければだんだんと形になっていきますからね。私なんか1曲仕上げるのに半年〜1年かけてますから(笑)おすすめしますよ。
──最後に今後の目標などありましたら聞かせてください。
今やっているバッハの無伴奏チェロ組曲の第1番を全部制覇することかな。それから、やっぱりアンサンブルをしたいですね。
──是非制覇した時は、録音してCDにしましょう!あとアンサンブル会など、今後どんどん企画していきますので、楽しみにしていてください!インタビューありがとうございました♪