──Aさんはこれまで数名の先生にレッスンを受けて来られたとのことですが、今日はそのあたりのお話を詳しく伺えればと思います。どうぞよろしくお願いいたします!
こちらこそよろしくお願いします。
──Aさんは元々ピアノを長くやられていましたよね。どうしてチェロをはじめようと思ったのですか?
ピアノを専門にやっていましたから、ピアノはある意味「仕事」という意識がありました。音楽は好きでしたので、ピアノ以外で何か楽器をしたいなぁと考えたとき、チェロって音が素敵だし、歳をとっても続けられるかしら、と思いました。大編成のオーケストラなんかも経験できますし。その点ピアノは、アンサンブルといっても他の楽器の伴奏がメインになってしまうところがありますので。
──わかります。仕事を趣味にするってなかなか難しいですよね。確かにピアノもとても素敵なアンサンブル楽器だと思いますが、どうしても小編成になってしまいますからね。
それで、最初は自宅に出稽古に来てくださる先生に習い始めました。楽器は、レッスンをはじめる前に自分で楽器店を探して、そこで数十万円の楽器を買いました。
──自らお店を探して自ら決めて購入したというのはすごい!音楽を専門にやられていたからそういったことには慣れていたのかもしれませんね。それで、その先生には長いこと習われていたんですか?
もう20年前くらいのことなので詳しくは覚えていないのですが、若い先生だったんですけれど、当時チェロを弾くとき左手の指が全然拡がらなくて、ゴルフボールを指に挟んで訓練したりして。
──「押さえる指と指の間が拡がらない」という悩みは、ほとんどの初心者の生徒さんが通る悩みですね。とはいえ、はじめてすぐゴルフボールって(笑)一生懸命な先生だったんですね。
次に習った先生は女性の方だったんですけれど、同い年ということもあって、お友達みたいな仲になったんです。例えば、先生の演奏会のピアノ伴奏を私がして、会場まで一緒に移動なんかもしました。10年くらいお付き合いしたかと思います。そのうちに最後のほうには、レッスン中に先生のプライベートなご相談とかを受けるようになってきて。私はチェロが弾きたいのに。
それと、前の先生はしっかりとした音で弾くように指導されたんですけど、その女性の先生は「そんなにゴリゴリ弾かないでもっと軽く弾きなさい」とおっしゃって、スースーとした弾き方を教わりました。私はチェロの豊かな音を出したいのに。
基礎的な指導なんかも、「できないなら無理して型通りにやらなくても別にいいわよ。」とおっしゃって。色んなことが重なって、なんか違う、なんか違う…と思うようになってしまいました。
──今でも、基礎をおろそかにしてきたことで出てきた問題点、みたいなことで悩まれていますよね。
はい。長年の癖が抜けないというか。それで、ある時発表会に出演することになって、私の古くからのピアノ仲間を呼んだんですね。そしたら、演奏が終わったあとに「チェロってこんな音だったっけ?」って言われたんです。それがショックでショックで…
──それはショックですね〜。私なら夜眠れなくなると思います…(苦笑)
音楽がわかる昔からの仲間ともなれば、変にお世辞を言うほうが失礼と思ったのかもわかりませんが…私にはチェロだめなのかしら…もう諦めた方がいいのかしら…そんな風に思いました。でも、そんなことない!まだ上達できるはず…と思い直し、また新たなチェロ教室を探したというわけです。
──そして、Arcoに来てくださったんですね。ありがとうございます。Aさんが私の所にいらしてから2年くらい経ちますが、ズバリ!通い続けてくださってる理由を教えていただけますか?
はい。それは、上達していると思えるから。長年の変な癖が抜けなくていまだに四苦八苦していますけど、先生が根気よく教えてくださって、少しは上手くなっていると感じられるからですね。
──2年前の習いはじめの時は、左手の狭い形も広い形も、全ての音ををシフト移動して取っていましたもんね。今では、音程は「点で取るのではなく面で取る」ということを意識されて、少しずつ長年の癖が改善されてきていますよね。素晴らしいです。
ありがとうございます。主婦業もなかなか忙しく、週に2・3日、1時間くらいずつしか練習ができないのですが、少しずつでも上達していければと思っています。
──はい。私もできる限りのサポートはするつもりです。Aさんのペースで、前に進んで行っていただければと思います。最後に、今後の目標や夢などありましたら教えてください。
良い仲間を見つけて、弦楽四重奏とか、ピアノ三重奏なんかをやりたいです。もっと綺麗な音が出せるように練習して、老人ホームやホスピスにチェロで出演できたら素敵ですね。でも、残された時間が、健康寿命がどれだけあるか心配ですが(笑)
──弦楽四重奏はArcoの企画でもぜひやりたいと思っています。実現できるよう一緒に頑張りましょう!ありがとうございました!